『投資と積み立て投資は似て非なるもの』
今回のテーマはズバリ『投資』のこと。日本人である私達は、ちょっと苦手なジャンルだと感じている人も多いかもしれません。でも、少しづつ、周りで話題になるようになってきたこともあり、気になっている人もいるのではありませんか?
それでは、皆さん、一緒に学んでみましょう。
資産形成に関心が高まる
iDeCo(個人型確定拠出年金)の口座数は、2024年1月時点で320万口座を超えました。
2016年3月末は26万口座でしたので、数年の間で大きく増加したことが判ります。
また、積立NISAの利用者を年代別にみると、30代が25.1%、40代が25.9%と、30代40代で全体の約半数を占める一方で、90.9%は投資未経験です。(2023年9月末時点)
住宅の一次取得者層である30代、40代にとって、積み立て投資を活用した資産形成は関心が高いようです。
「安く買って、高く売る」ことができれば、利益になるのが投資です。
「積み立て投資」は「投資」とは異なり、金融商品の「価格」ばかりに気を取られずに、何口買えるかという「口数」=「購入した金融商品の量」に意識を向けるべきです。
一度でまとめて金融商品を購入する「投資」の場合、最初に買った口数が最後まで変わりません。ですから、口数が意識される事がなく、「価格」の値動きばかりが気になってしまいます。
投資は幾らで買ったかで損得が決まりますが、積み立て投資は幾らで買ったかよりも「口数=買った量」が重要です。
私達の脳は、損をすることに敏感です。
例えば、友達に食事に誘われて5,000円分の料理を食べました。いい気分になってお会計の時に、「今日はご馳走するよ。」と言って奢って貰った時の喜びと、逆に「今日はお金持ってないからご馳走して」と言われて、さっさと帰られてしまった場合の怒りはどちらが大きいでしょうか。
恐らく後者の方が大きいのではないでしょうか。
ご馳走してもらった金額も、ご馳走させられた金額も同様に5,000円です。しかし、その喜びに比べて、怒りの方が大きく感じやすいのです。つまり、人は得よりも損に敏感だということです。
無意識の損失回避
投資においても同様に、私達の脳は「損」や「負け」に敏感に反応します。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授はこの特性を「損失回避」と呼び、脳が「得」より「損」を2〜2.5倍大きく感じると発表しています。私達の脳は、得よりも損の方を大きく感じるようにできているわけです。
投資をはじめる時、「下がったらどうしよう」と心配する人が多いのも、脳が無意識のうちに損を回避しようとしているからです。
これまで順調に値上げしている金融商品をみて、「このまま上昇する」と思うでしょうか?そう思う人は、すぐに投資をするでしょう。
しかし、そういう人は稀で、ほとんどの人は「そろそろ値下がりするのではないか?」と心配されると思います。
逆にどんどん値下がりする商品をみると、「そろそろ反転して上昇するかな?」と思うより、「まだ下がるのでは・・・」と考える人が多いです。
これは私達の脳が損に敏感で、それを避けたいという損失回避の気持ちが無意識のうちに働いているためです。
投資に限らず、私達は転職や起業など、新しいことにチャレンジすることに躊躇しがちです。そこで得られるリターンより、失敗した時の損失を必要以上に見積もってしまうためと言われています。
損失を回避したいという本能なのでしょう。
投資に関する2つの感情
人は投資をする際に大きく分けて2つの感情を持ちます。
・1つは「儲けたい」という気持ち。
・もう1つは「損したくない」という気持ちです。
この2つは似ている様で異なります。
「儲けたい」気持ちは、高い利益がでれば満たされます。つまり、何%の利益を得られるかという「利回り」が基準になります。 しかし、この「儲けたい」という欲を追えば追うほど、「大きな損をしてしまう」リスクが高くなります。
ハイリスク・ハイリターンという表現が、それを端的に表しています。
「儲けたいけど、それを追い求めすぎると損するかもしれない」という私たちが悩まされるジレンマです。
一方、「損しをたくない」気持ちは、資産が増えることより、減らないことを重視します。とくに日本人は「お金を増やしたい」という気持ちよりも、「損したくない」という気持ちが強いように思います。
マイナスからの回復力
絶対に損をしない方法はありませんが、最終的に損をしないために重要なのは、「マイナスからの回復力」です。
その「マイナスからの回復力」を、感情に左右されず、機械的な仕組みを使って実現しようとするのが「積み立て投資」です。

毎月1万円ずつ、ある投資信託に積み立て投資をしたところ、その投資信託は10年間で図のような値動きをしました。
毎月1万円。年間で12万円。10年間で120万円分、この投資信託を買ったことになります。さて、10年後の資産は幾らになっているでしょうか?
選択肢は①~③
①約72万円
1万円の時に積み立て投資を始めて、10年後に半値の5,000円になっているから、120万円の半分程度かな。
②約90万円
一時は2,000円まで下げて、その後に5,000円まで回復したので、①よりはマシかな。
③約139万円
いやいや、これこそが積み立て投資の強みかな。
正解と解説は、次週のコラムでお伝えします!
(じゅうmado 提携FP 渡辺紀夫)