家を建てるときに、最も大切に考えられているのは、家族が集う場所である「LDK」でしょうか。
今回は、そんなLDKの中でも「キッチンまわり」について考えてみたいと思います。流行りに惑わされない、家族の暮らしにあったレイアウトやデザインなど、ポイントをピックアップしてお伝えします。
よく話題となる台所仕事のしやすさや家族と過ごす時、動線ももちろん大切、使い勝手も大切、そして、暮らしに合うことが大切、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
キッチンとダイニングテーブル
このテーマでは、ダイニングテーブルの位置が、キッチンに対してどの位置だと、動線が良いか?ということを考えてみます。
キッチンは、これから新築する人、リフォームする人は、対面式を選択することが多いですよね。お料理中や片づけの間も家族との会話が楽しみやすいということが一番の理由だと思います。
対面式キッチンの前側にダイニングテーブルがある場合、一番良いのは、食事の前に家族がダイニングテーブルに居てくれる状況かもしれません。例えば、料理を出す際に、ダイニングテーブル側で受け取ってくれると、食卓への配膳がとてもラクになります。
子供のころ、よく、「テーブルの準備して」と母に言われていました。ついつい物を置きっぱなしにしがちな、ダイニングテーブルを片づけ、箸を用意する。その間に、お皿に盛られた料理をテーブルへ運ぶ役割。
テーブルが離れている場合にも、こういう家族のお手伝いはあるとお母さんは嬉しいはず。もちろん、ご夫婦間でもぜひやってもらいたい、幸福な時間の過ごしかた。
もし、お一人で、食卓の準備をされるということであれば、動線的には、キッチンの前側よりも、横にダイニングテーブルが配置されているほうが、料理が運びやすいというメリットがあります。
最近は、この横置きの設計プランが多くなったように思います。食卓を準備し料理を並べるところまでも、もしかしたら、お一人でされるイメージなのかもしれませんね。もちろん、横配置でもご家族一緒の方が良いですかね。
ただ、キッチンの横にテーブルがある場合、配膳の際には、確かに便利なのですが、その時以外は、少し回り道をしないといけないケースも考えられます。
例えば、キッチンの前側はリビングだったとして、テレビをつけたまま、料理をしていて、ふとテレビが気になって、近くに行きたい!と思った場合など。イメージできますか?ちょっと遠回りすることになるかなと思います。
ダイニングテーブルを回って、前にいかないといけないですよね。
では、これを回避する方法を考えてみましょう。思いつくのは、テーブルが配置されている反対側を、壁ではなく、通れるようにしてはどうだろうか。ということ。このような配置を、アイランド型(島)といいます。
では、これですべて解決かというと、アイランド型の場合、その分、通路としてのスペースが増えることになるので、それがデメリットになることもあります。全体としての空間が広い場合は、気にしなくても良いですが、できるだけ費用を押さえたい、省スペース設計にしたいと考える場合など、総合的な判断が必要です。
動線をよくしようと思ったにも関わらず、例えば、同じ広さの空間なのに、物を置く場所がなくなって、かえって不便になることも考えられますので、よくよく、そこでの生活をイメージするようにすると良いでしょう。
省スペース設計ということであれば、最近、少し見直され始めている、昔のような壁付のキッチンが良い場合もあります。壁に向かって料理や片付けをするのが寂しいとイメージされる人も多いと思いますが、常に家族が一緒にいるとは限りません。
振り向いたところに、ダイニングテーブルが置いてあり、ちょっとした作業スペースにもなる。お子さんが小さいうちは、ダイニングテーブルで一緒にお料理を手伝ってくれるかもしれません。
ダイニングテーブルだと、椅子がありますし、テーブルの高さもキッチンの高さに比べると低いので、小さなお子さんはお手伝いしやすいですよね。
家族の成長と共に、暮らしは変わるかもしれません。家族の考えによって、キッチンでの過ごし方は変わるかもしれません。あなた自身の理想のみではなく、ぜひご家族との暮らしを描きながら、配置を考えてみてください。
キッチンとカウンター
このテーマでは、キッチン周辺にあるカウンターの利用の仕方、収納なのか、食事なのか、飾り棚なのか、など、利用用途を考えて配置をするということを考えてみようと思います。
キッチン周辺のカウンターを利用する目的、一つ目はキッチン家電を置くため。
さて、置きたいものはどんなものでしょう。カウンターの上に置いてある方が使いやすいもの、下の棚などに置くよりも良いもの、いろいろ想像してみましょう。
カウンターの上に置くと良いキッチン家電は、日常的に使う、コーヒーメーカーやトースター、炊飯ジャーなどでしょうか。電子レンジが欠かせないという方も多いでしょうね。
最近ではパン好きな方も増えて、朝食がパン派の方も多い、だからこそ、コーヒーやトースターは、頻度が高いと思いますが、もちろん、ご飯派にとっては、あまり使用頻度は高くないはずです。
使う頻度が多いものほど、どういうシーン(状況)で使うかを考えて、シンクからの距離、ガスコンロからの距離も含めて、配置すると良いと思います。
また、合わせて、機器そのものだけでなく、同時に使用するものの位置も想像してみましょう。コーヒーをいれるなら、ペーパーフィルターやコーヒー豆、計量スプーンなどでしょうか。トースターであれば、トングやお皿など。
同時に使うものの近くにあると便利なので、すべてをカウンターに置くことができない時、別の場所を検討する際には、よく使うものとセットで置くことができる場所を考えてみるのもおすすめです。
次に、食事をする場所としてのカウンターを考えてみましょう。
どうでしょう?どういう時にカウンターで食事をされますか?例えば、昼間のお昼ご飯、ひとりでパパっと食べるという場合には、カウンターで食事しようとイメージされるかもしれませんね。
ここで、少し考えて欲しいのがカウンターサイズ(奥行)についてです。例えば、一人で食事をする時、パパっと食べるもの。そんなに大きなお皿は使わないかな?
昼間の休憩にコーヒーを飲む、おやつを食べる、そんな使い方の場合でも、大きなお皿は使わないでしょうし、並べる数も少ないでしょう。
こういう場合のカウンターは、奥行きが狭くても大丈夫です。
しかし、ご夫婦や家族で一緒に食事をすることを想定すると、どうでしょうか。その分、お皿の数が増えたり、食事の内容も変わったりして、大きなお皿を並べることも考えられますね。
日常的にカウンターで食事をとることを想定するならば、やはりゆったり目の奥行きサイズにした方がよいと思います。
最近では、キッチンの前側にも広いカウンタートップがあるタイプ(アイランド型キッチンに多い)も、よくみかけますが、そのまま食事ができる想定をされていることもあれば、ちょっと、お皿を一時的に置くだけということもありますね。
利用シーンによって、必要サイズが変わってくることは、なんとなく想像できたでしょうか。
しっかり食事をする想定であれば、よくあるカウンターの奥行きサイズ30cmでも、狭いかもしれません。40㎝~45㎝くらいは欲しいとなると、他の箇所にも影響が出そうですね。
その場合は、ダイニングテーブルは置かずに、リビングセットのみにしてもよいかもしれません。お食事時間以外のくつろぎ時間は、リビングのソファーで過ごすことが多い家族であれば、これがベストであることも考えられますね。
あるご夫婦は、夜のお酒を楽しむためと言われていました。キッチンスペースより少し離れたところに、あえて、カウンターを作っていらっしゃいましたよ。下の棚には、お酒がずらり。そんなご夫婦も素敵ですね。
最後に、キッチン前に、飾り棚としてのカウンターを設置する場合。
カウンターが、リビング側から見える位置であれば、家族写真を置いたり、お子さんが小さいうちは、お子さんが描いた絵を飾ったりしても良いでしょう。花瓶に入れたお花などがあると、心が落ち着くかもしれません。
このような使い方であれば、先ほどの食事とは逆に、奥行きはそれ程必要ありませんね。
ただ、飾り棚として使うカウンターは、キッチン周りでなくても、良いように感じますが、家族が共通して使うものなどを置いておく収納スペースと一緒に考えると、キッチン周りにあると便利に使えることもあるでしょう。
例えば、貯まりがちなレシートを入れたり、学校からのプリントや書類は、意外とかさばりやすく、見た目もきれいではありませんのでしまっておきたいもの。ただ最近は、伝達が紙ではなくなりつつあるらしいですし、確保しておきたい、割引券やクーポン券なども、スマホの中で完結しているケースが多いので、スマホを置く場所や充電する場所と一緒にするというのがいいのかもしれないですね。
カウンターの使用用途として、家電品などを置く場所以外の、飲食スペースなどとして考えていた時に、意外と多いのが、年月が経つと使わなくなったというケースです。あると良さそうと思ったけれど、実際にはそれ程使わなかったんですね。
ダイニングテーブルが無ければ、さすがにカウンターで食事を予定通り続けるでしょうが、時々使うかもということであれば、そのカウンターは、残念ながら物置と化してしまうことも考えられます。
必要な物を置くスペースになったということであれば良いですが、ただ、片づけるのが面倒なので置いてあるとなりがちなので、そこだけは注意したいです。
もちろん、レイアウトは、家全体の間取り(窓やドアの位置なども含めて)、この限りではありませんので、よりベターなものになるように、いろいろ楽しく考えてみてくださいね。
キッチンとパントリー
このテーマでは、そもそも、パントリーって必要なのかどうかを考えてみたいと思います。
パントリーとは、食料品、備蓄品などを収納するためのスペースをさす事が多いですが、広さとしての考え方は、いろいろです。冷蔵庫やゴミ箱を置くスペースまで含めて、小部屋の部分をパントリーとしているケースもありますし、食品を保管する目的のため、奥行きを最低限にした収納スペースのような部分を差すこともあります。
例えば、保管する食品がストックの調味料や缶詰、レトルト食品のようなものだと、奥行が広すぎると、取り出しにくいなどの問題も出てきますので、パントリーがあると便利そう、ということではなく、何を置くのかということを考えて、スペースを確保しましょう。
キッチンの近くにあるなら、食料品だけではなく、比較的使用頻度の低いキッチン家電の保管場所として使ってもよいと思います。
パントリーに置きたいものによって、どの場所に設置するかも重要になってきます。例えば、すぐに使わない備蓄品、災害時に必要な水などを置いておくということであれば、必ずしもキッチンの近くにある必要はありません。
逆に、よく使う調味料や食材などで、無くなりそうなタイミングで買い足しをしておくものなどありますよね。あるいは、食べるものではないものの、ラップやビニール袋など、キッチンにあると便利なもので、使用頻度の高いものを在庫する場合。必要以上に在庫する場合は別ですが、無くなったらすぐに出したいというものについては、キッチン近くのパントリーに確保しておきたいものです。
パントリーは収納スペースですので、なんとなく、あると嬉しいな。と思いがちですが、実際に、どういうものをよく買っているのか、あるいは、パントリーがあれば買い置きしたいのかを、今現在の生活でも考えてみてください。
畳1畳分とか、半畳分とか奥行きをしっかり確保しているケースもあるパントリーですが、その奥行きは、必要なのでしょうか?
また、パントリーに扉を付けた方がよいかどうか、これも考えてみてください。パントリーのある場所にもよると思いますが、扉の開け閉めは動作をひとつ多くします。先ほど話をした、無くなったらすぐに使いたいものを置いているような場合は、扉が無い方が便利ということもありますね。
ただし、きれいに整頓できていることが大前提であることは言うまでもありません。
このように考えてみると、パントリーというよりは、整理整頓しやすい、収納棚を確保している方がより便利な使い方ができるのかもしれません。
あなたの生活スタイル、キッチンの使用の仕方、買い置き、在庫量など、各々違うはずですので、あると便利そうなパントリーだからこそ、どう使うかを想像してその場所を決めることをおすすめします。
いかがでしたか?キッチンだけで考えても、間取りを決めるのに考えるべきことはたくさんあります。順序を間違えると、プランを何度もやり直すことにもなりかねないので、プランニング(設計図を描く)前段階として、いろいろ想像してみるようにしましょうね。
迷うときは、無料の相談窓口である、じゅうmadoを利用してみてください。決断するのはあなた自身ですが、誰かに話すことで解決することもあると思いますよ。
(じゅうmado宇部 川村菜穂子)