前回までに、『ミニマムな暮らし』と『新築の家の規模が小さくなっている』ということをテーマとして、お話してきました。
最近は、共働きのご夫婦も増え、家にいる時間も少なくなり、家族が大勢集まることもなくなり、大きな家は必要なくなっていることもその背景にあると思います。このように、時代と共に、生活スタイルは変化していくのです。
そんな暮らし方の変化を念頭に、今回は、最近よく使われる「タイパ」タイムパフォーマンスの観点から家づくりを考えてみようと思います。
最近、あちこちで聞こえる「時短」「効率」という言葉。とにかく、今現在、このタイパに敏感な人が多いようです。
仕事の仕方ひとつとっても古い慣習には「それって効率悪くないですか?」。様々な便利アイテムを駆使して「こうすれば時短になる」。という、そんな人たちにとっては、家族と過ごす日常でも、たくさんの「時短」を意識することが重要なのではないでしょうか。
それでは、暮らしの中のどんなシーンで、時短できるのか?最後まで是非読んでみてくださいね。
暮らしの動きを最小にする
家づくりを考えるとき、多くの人が意識する「デザイン」。しかし、実際に暮らしていく中では、「快適さ」が重要であることは言うまでもありません。
快適に過ごすため、間取りを決める際「収納の広さ」を考えたり、「設備の充実度」を図ることもあるでしょう。
もちろんそれらも大切なのですが、ここでは、1日の中で無意識に繰り返している“ムダ動作”をどれだけ減らせるか。 そして、家自身が自然と整っていく“仕組み”をつくれるか。という点で考えてみたいと思います。
動きに着目「動線」を考える。
家づくりにおいて、動線を考えるということは、とても大切なことですよね。この動線を最短化することで、毎日の「小さな疲れ」は軽減されていきます。
たとえば、
・キッチンでの「冷蔵庫→シンク→コンロ」の距離感。
・洗面所から洗濯機、干すスペース、収納場所までの移動ルート。
帰宅した時に、バッグや鍵、荷物を置く場所が離れたところにあると、行ったり来たリする可能性もあり、少し大げさですが、こうした“数十歩の差”が、積み重り、毎日の疲れに繋がるかもしれません。
・キッチン横にパントリー
・玄関にバッグの一時置き
・洗う・干す・しまうを同じ空間で完結
洗う、干す、しまうを同じ空間で行うために、「ランドリールーム」を設ける人も増えました。さらに「しまう」という工程を省いたり、「干す」という工程を省くことを考えます。
しまう工程を省くためには、干したそのままのハンガーで、洋服掛けへ。干す工程を省くために、乾燥機を導入する。等ですよね。
家が勝手に片付く仕組み「自動化」
これから新築を建てようとする人は、家そのものを自動化しやすい設計にしておくことで、“暮らしの負担”が大幅に減ります。
“自動化がしやすい家”と“自動化しにくい家”とは、どういう違いがあるでしょう。
例えば、最近では、お掃除ロボットを置くことを想定した、ロボット掃除機の基地があったりしますよね。お掃除ロボットを使うなら、当然、床の段差をなくす必要がありますし、元々、床に物を置かないような収納計画だったり、床から浮かして、壁に取り付ける収納計画にすることで、お掃除が隅々まで行き届くようになります。
スマート家電の普及により、照明、エアコンなどを、自動制御するようになりました。自動制御するためには、その仕組みを家の中にあらかじめ組み込んでおく必要があります。
後から、付け足すこともできる製品もありますが、どうしても、壁の外に機器が飛び出していたりして、見た目にスマートにすることが難しいでしょう。
最初から、そのように電気配線を行ったり、インターネット回線、WiFi機器の設置などを考えておく必要がありますね。
最近、導入が増えている全館空調の設備についても、自動化といえます。家の中全体を意識せずに、快適な温度調節をしてくれるということは、その手間を省くことができるということです。
ただし、先ほどの乾燥までを全自動で行う洗濯機を置くのも、「干す手間を省く時短」ですが、「1回にかかる時間は長く」なりますので、どのタイミングで作動させるかなどは、生活リズムにあわせて考えた方が良さそうですね。
「余白がある家」は無駄のない家?
余裕がある、余白がある家であり、置き場所、しまう場所が、決まっている家は、勝手に片付く家にする最初の一歩。
定位置を決める
例えば、帰宅した際に、バッグをどこに置くか決まっていなければ、適当なところに置いたまま、他の作業をして、いつまでも片付きません。
脱いだ服をとりあえず、ソファや椅子にかけてしまう、定位置がないという人も結構いるのではありませんか?そういう場合には、別の時間で片付けるという行為が必要になってしまいます。
洗濯物をしまう場所までが遠くて、つい後回し、干しっぱなしにしてしまうなど、これらの行為により、あらためて、何か行動を起こす際に、作業が必要になってきます。このような作業も非効率といえます。
そして、最初に伝えた「余裕」「余白」が重要。例えば、定位置を決めていても、置きにくかったり、しまいにくかったりすると、そこに置く行為が面倒に感じます。つまり、いくら定位置を決めても、そこに洋服がパンパンに詰まっていたりすれば、つい、しまうのが面倒になり、置きやすい場所に置いてしまいます。
収納計画は未来予想
自然に片付くではなく、意識して片づけない限り、片付かないということであれば、苦手な人にとっては、いつまでたっても片付けるという習慣は身に付きません。
もちろん、動線との関わりも重要です。定位置を決めても、わざわざ感が出てしまうと、あえてそこに置きに行くという行為は長続きしないでしょう。
最近は、家自体がコンパクトになっているため、収納スペースにはかなりの工夫が必要になります。長い間暮らしていく住まいでは、持ち物が変わっていくのは当然のこと。
変わったとしても、ある程度は柔軟に変化させることができる、可動式の棚だったり、収納だったりを上手に使って、暮らしを都度、整えることができるようにしておくと良いでしょう。
習慣の自動化がもたらす時短
自然に片付く家のもう一つのポイントは、家族全員が片付けに参加できること。片付ける場所がわかりやすいことも重要です。
すべて、目隠しの扉をつけてしまえば、見た目はスッキリしますが、どこに何がしまってあるのか、扉を開けなければわからない、という状況になります。日ごろ家事をしない家族は、片付ける場所がわからず、つい放置ということもあり得ます。
そうならないための工夫が、最近よくある「見せる収納」
使うときも取り出しやすく、片付けるときも片付けやすい、これが自然に片付く家であり、実は「時短」につながる「無駄のない家」になります。
そして、日々の暮らしの中で、ぜひ考えて欲しいのが、家族の習慣です。
片付けやすい場所をいくら確保しても、そもそもの習慣が備わっていなければ、実質的にはうまくいきません。
帰宅時に、玄関横の土間収納にカバンを置いて、靴を脱ぎ、上着をかけて、家の中に入る。鍵を置く場所、カバンの中身を取り出すのか、取り出さないのかによっても、カバンを置く場所として玄関横が良いのかどうかは違ってきます。
玄関横に置いた後で、家事をこなしながら、中身を取り出しに行くなら、カバンはリビングの方が良いかもしれませんよね。
上着を脱ぐだけでなく、帰宅時には服も着替えるという人は、玄関近くからクローゼットがあると便利かもしれません。脱いだ服を、すぐに洗濯する場合は、そのまま洗面所への動線としてつなげる。
最近では、勝手口はなくなりましたが、場合によっては、出入口をふたつ設けても良いでしょう。買い物をして帰ってきた日は、まずは、荷物をキッチンパントリーへ置いて、片付け。そこから、玄関の方へ移動して服を着替える。
ここで、1つ問題となるのが、家族の習慣の統一です。習慣が同じであれば、より快適さが増しますが、そうではない場合もあるので、しっかりと家族での会話をして欲しいですね。
まとめー目指すはゆたかな時短ー
さて、ここまでの内容、実は以前に書いた「ライフハック」に結びつきます。仕事の効率を上げるためのテクニックから派生して、家事などでも効率をあげるライフハックな暮らしを考えました。
こういう、効率、時短を何故したいのか、なぜ意識するのか、もう少し考えてみると、私は単なる時短ではなく、「豊かな時短」を目指しているのではないかと思うのです。
日々を追われるように過ごす中で、致し方なく時短をせざるを得ないのではなく、時短することで生まれてくるゆとり、そしてそのゆとりを好きなことに使うことができるそんな豊かな暮らしを求めているのではないでしょうか。
「効率 × 癒し」を掛け合わせたライフスタイル、「余白のある暮らし」は、さらに「余白を生む」今、多くの皆さんに意識して欲しいこと。
家を考えるときに、“心が疲れない仕組みをつくること”を念頭におけば、皆さんの暮らす家は、快適な空間となり、豊かな時短にきっと結びつきます。
家族で心が疲れない仕組みづくりをぜひしてみてくださいね。家づくりを行う工程では、残念ながら、家族が喧嘩になるシーンもあったりします。考え方をお互いに知らないために、暮らし方に違いが生じ、発見と同時に意見のぶつかり合いになるわけです。
その意見のぶつかり合いは、家を建てる前に是非行っておいて欲しいものです。相手を信頼して任せるということは一見よいことのような気もしますが、後々になってこんなはずではなかったとならない為にも、ぜひ、きちんと会話をしながら薦めてくださいね。
夫婦二人で話すと、つい喧嘩のようになってしまう。どっちが正しいのかわからなくなってしまう。パートナーが非協力的など。様々な理由で、話しが前に進まないケースも実は多くあります。そんな時は、ためらわずに、相談窓口を利用してください。第三者が間に入るだけでも、問題の整理整頓ができることもありますから・・。
(じゅうmado宇部 川村菜穂子)



